個建て契約のドライバーにとって、不在は大きなのストレス源のひとつです。とにかく荷物の配達が完了しないと報酬にならないので、不在の家に何度配達を試みても、無駄な時間と無駄な労力と無駄なガソリン代が増加していくだけです。
何回再配達しても、荷物を受け取るお客様も出荷元も運送会社も損をしない。そんなサービスを提供し、享受することができるのは、配達ドライバーがその損を引き受けて、身を削っているからです。不在が続くと、うまく行かないことへの苛立ちが累積し、怒りで我を忘れそうになります。きっとYoutubeで晒されている荷物を放り投げたり、叩いたり蹴ったりする配達員も、消化できない大きなストレスに潰されてしまったのかなと思います。
私が担当しているエリアは特に不在が多いエリアで、割に合わずに歴代の担当ドライバーも苦しんだそうです。よほど到着を心待ちにしている荷物でもない限り、その日に配達されることを認識しているお客様はなかなかいません。時間指定をしていなければ、予想もしない日時に急に配達にやって来た、という感覚ではないでしょうか。
そういう訳で、最初の配達から不在でも、それは仕方がないのかなぁと思っています。不在票を投函し、「あなたに荷物が届いていますよ」とお知らせする意味があるのだと思うようにしています。それでも、不在票を投函したのに、翌日になっても再配達の依頼が無いことが多いです。その場合、2日目になっても、予想もしない時間に急遽配達にやって来ることになり、また不在という可能性が高まります。そして、2日目も不在票を入れるのですが、3日目になっても再配達の依頼が無く、また当てずっぽうに訪問することとなり、不在の無限ループとなっていきます。
これはその人の性格なんだろうと思います。不在票を入れると必ず都合の良い時間に再配達の依頼をしてくれるお客様もいますし、いつまでも放置するお客様もいます。ポストの隙間から昨日投函した不在票が見えたり、不在票すら入らないほどに数か月分のチラシ類でパンパンのポストもあります。まあ、不在票を見なくてもネットを通じて不在連絡は届いているはずなのですけど、荷物要らないのかな? とこちらが心配になってしまいます。
同じエリアで配達していると、そのうちに「①不在がちな人」や、「②不在票を投函しても反応しない人」がわかるようになってきます。①かつ②の人は配達困難で、何日も積み込み⇒配達⇒持ち戻り⇒荷降ろしを繰り返すため、だんだんと包装がボロボロになっていきます。どの運送会社でもある程度の配達回数や配達日数を限度として、いったん配達をストップする仕組みになっていると思います。郵便局のゆうパックは1回目の不在で配達ストップですね。
その人宛の荷物が出てくる度に、限度まで不在が続いて配達ストップの処理をするまでいってしまう人のことを、私は「不在のオールスター」と呼んでいます。毎回配達ストップまで行ってしまう人の名前は嫌でも覚えてしまいます。閑散期に不在の2度回り3度回りなどをしていると、「不在」で名を馳せた人たちの荷物がずらりと並び、まるでプロ野球のオールスターのようになるのです。不在回りで他の荷物が配達されていっても、さすがオールスターに選ばれるだけあっていつまでも荷台に残っています。こうなると不在回りするだけ無駄です。そして、「不在のオールスター」の中でも更に頻度が高い方々は、「不在の殿堂入り」をすることとなります。朝の積込時に殿堂入りのお客様の荷物を見つけると、どうせ持ち戻って荷下ろしするんだから、せめて梱包がボロボロにならないようにと積込に気を配ることになるのです。
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